隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
「落ち着いたか?しーちゃん」

 暖かい牛乳を出され、飲みながらティッシュを何枚も使ってあたしは顔を拭いていた。

「蓮、そんなに悪いのか?」

 それについてはなんとも言えないのだけど、怪我の程度と、とりあえず目覚めなことには安心できないという状況なのを伝えた。全部、説明してくれた医師から聞いた話。抜けてるところもあるかもしれないけれど。

「そうか……」

「いっぱい、なんか管付けられて、人形みたいだった……」

 タケさんは辛そうな顔をした。あたしは、脱いだコートのポケットにあるあのカードが気になっていた。
 カウンターに座って。タケさんはあたしから1つ椅子を空けて座ってる。店内の電気は点いていて、いつものロックはかかっていない。静かな店内だ。2人以外は誰もいないこの場所は、まるで別の店みたい。

「タケさん、あたしの目のこと、蓮から聞いたことあるでしょ?」

「あー、……ああ」

 タケさんは、湯気の出るマグのあたりを見つめながら、小さく言った。あたしは隣の椅子にかけてあるコートを探り、ポケットにあるカードを出す。

「……蓮、こんなの持ってたんだって。蓮のお母さんが」

 名詞サイズのカードを渡すと、タケさんは手に取り、それを見る。

「臓器提供意志……カード?」

「裏、見てください」

「裏?」

 裏返して、そこを見た瞬間ハッとした顔。タケさんはみるみるうちに厳しい表情になっていった。

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