隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
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 あたしと蓮は幼なじみ。
 父親同士が同級生で、家族で集まって食事をしたり、詩絵里と蓮が赤ん坊の頃から一緒に旅行をしたり、とっても仲が良かった。といっても、良かったのは2人が小学校2年生までだったけど。

 あの日、全てが変わってしまった。蓮も、あたしも。まわりもみんな。

 あたしと蓮が近所の公園で遊んでいた時、蓮の振り回したバットがあたしの右目に直撃した。

 瞼が切れ、血だらけで泣き叫ぶあたしに気付いて、近所の大人が来たらしい。実際、その時の記憶はある。
 あたしの右目は、その時の怪我が原因でほとんど見えない。うっすらと光を感じるくらい。
 疲れが溜まったりすると(あんまり疲れるようなことしていないけど)その微かな光も感じなくなることがある。

 そして、成長と共に負担がかかって、見える方の左目の視力が悪くなっていた。だから左だけコンタクトレンズを入れている。
 これから先も負担はかかり続ける。そのうち左目も見えなくなってしまうんだろうか。悪くなることはあっても、良くはならない。

 蓮は暴れるような子供では無かったので、事故だったのだけれど。あくまで、事故。
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