隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
 2つ年上のミナトさんに合わせた、というわけではないけど、心持ち大人っぽいような服装にしてみた。
 デニムのミニにヒールのあるブーツ。上はTシャツをやめてブラウスにした。んーでも、顔が幼いからあんまり意味無いか。メイクをいつもよりきちんとして。(あの飲み会の時よりもきちんとメイクしてる)

「俺、3D初めてなんだよね~詩絵里ちゃん観た事ある?」

「あたしも初めて。飛び出るってどんなのかなあ」

 ちょっとワクワクしていた。2人とも、子供みたいに。
 3Dってどんなのだろう。テレビではよくCMを見るけどね。実際知らないし。ゲームにもあるし。あたしはあまりよく知らないんだけど。

「さっきさぁ、俺のこと見つけて寄って来る時、何回も人にぶつかってたけど、大丈夫だった? そんなに急がなくて良かったのに」

「う、うん。ごめんよそ見して歩いたから……」

 片目が見えないあたしは、人混みも苦手の1つ。右目が不自由だから、右側に人が居ると見えなくて、ぶつかってしまうんだ。
 ミナトさんはまだ、目の事を知らない。話していない。だからといって、あたしもいつ言おうとかは思っていない。

「そろそろ行く? 俺、予告から観る派」

「あ、あたしも」

 別にこだわりは無かったけど、そういうことにしておく。入口で3Dメガネを渡された。本編が始まったらかけるんだって。

 通路を歩いている時にビーっと開始ブザーが鳴り、まだ席に辿り着かないうち、ゆっくり暗くなっていった。うわ、ヤバい。辺りが見えなくなっちゃう。

「こっち」

 焦った時、ミナトさんに左手を掴まれた。

「あ、ありがと」

 助かった。それと同時に、胸がドキンと鳴った。掴まれた手は、あたしの掌を掴む。手を繋いで、ミナトさんが導いてくれた。
 席に辿り着き、予告や宣伝を観ていた。

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