隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 なんか、疲れそう。目が回っちゃうかもしれないなぁ。ちょっと座席がスクリーンに近いような気がする。でも、混み合ってて上映開始してるから、から移動もできないし。

 そういえば、高校の時に映画館に行ったのって、その時の彼氏とだ。映画がつまんなくてほぼ寝てたっけ。それを彼氏に凄く責められ、それを蓮に言ったんだった。
 蓮は、笑って聞いてくれてた。

 あたし、今まで映画館でずっと寝てるじゃないか。映画館は寝るところじゃありません。

 色々と映画館での思い出的なものを廻らせているうち、本編が始まった。
 ミナトさんが渡された3Dメガネをかけたので、あたしも真似してかける。

「……」

 ミナトさんは「わーすげぇ」と小声で感動しているけど、あたしには何がどうなってるのか……画面が飛び出して見える、なんて事は無かった。
 分からない。なんか、映像がぶれたり、暗い部分があったりしてるように見えているだけ。

 飛び出してなんか、来ない。そんな風に見えない。
 もしかして……。もしかして、3D映画って両方の目があって、初めて見られるものなの?
 なぁ……んだ。そっか、まあ、そうだよね。仕組みを知らないなんて無知も良いとこだ。
 暗闇で、1人で笑ってしまった。誰にも分からないだろうから。

 浮かれて、馬鹿みたい。もう、とたんに映画がつまらない物になった。一緒に居る人と同じに楽しめないなんて。そして、あらためて目の不自由さにショックを受けた。いまさら。本当に、いまさら。

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