隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
「……手、繋いでると落ち着くよね」

「はぁ……」

 もうできれば離して欲しい。心臓が2倍速だ。そう思った時、手がぱっと離された。

「またね」

「……うん」

 今度こそ車を降りて、手を振る。車は走っていった。車内から、ミナトさんも手を振っていて、あたしは見えなくなるまで見送る。
 あたしが振った手は、ミナトさんが掴んでいた方の手。

 もっと一緒に居たいとか。また会いたいなとか、そう思ったらきっと恋をしているんだと思う。心が求めていけば、きっと着地していくところだ。

 風は、浮ついたあたしの心を冷ましてはくれなくて、ただ肌に冷たいだけだった。建物に当たる光が、オレンジ色になっていた。

 蓮は、何をしてるだろう。今頃は。


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