隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
 日曜日のシフトがお昼からだったので、明るくなってからの出勤だ。慌ただしくなくて好き。たまにこういうのがあるんだけど、開店と同時が当たり前だから、7時半には店に行かなくちゃいけない。朝はバタバタだ。

 いい天気、とCMみたいに伸びをしながら、空を見上げた時だった。

「おい、詩絵里!!」

 うわっ! 漫画みたいに、こう、肩がびょんってなってたと思う。肩がびょんって。

「……っくりしたああ」

 振り向くと、ジャージを着た蓮だった。出たよ運動男子。体に良いから素敵なことですけどね。

「走ってたの? こんな時間に」

「だって、夜さみーんだもん」

 確かに、ここ最近はもう夜になると寒くなる。蓮は、走るのが日課。たまに、こうやって道端で会う時がある。

 ふぅ、と蓮がタオルで汗を拭う。眩しいな、と思った。エロい目で見ちゃってるかもしれない。
 改めて思う。いつの間にか、こんなに男らしくて大人っぽくなったんだな。まじまじと見てしまう。

「なんだよ、なんか付いてる?」

「あ、ううん。なんでもないよ」

 やだ、あたし変態だな。顔が熱くなるのを感じる。ちょっとそっぽを向いた。そっか、今日は日曜日だ。蓮はお休みの日。

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