隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~
「ああ、俺は良いんだけどさ、蓮が大変だったんだよあの後」

 なんだろう。暴れでもしたんだろうか。いや、それは無いだろうけど。

「なにかあったんですか?」

「更に飲んでさ、ベロッベロに泥酔。もう立てなくて、トイレでゲロして、なんか泣いてるし、ウザい感じになってさぁ。なんだよもうケンカしたのかよって聞いてたんだけど」

 蓮がそんな風になったなんて。驚きだ。トイレでゲロ……なんだかどこかで聞いたようなことですね、それ。あはは。

「しーのヤロー、俺のことなんかちっとも分かってないんだぁぁ! とかわけ分かんないこと言ってゲロと鼻水だらけになってたから、とりあえず顔洗って床に寝かせといたわ」

 ひゃっひゃと笑ってるタケさん。

「えーそんなことになってたんですか……ケンカっていうか、別にケンカしたわけじゃないんですけど……」

 ケンカというより、あたしが一方的に怒って出て行っただけだけど。

「仲良くしなよー。店閉めて、あとおんぶして俺んち連れて帰ったよ。店に転がしておくわけにいかないから」

「タケさん持って帰ったんですかー重い荷物でしたね」

 冗談飛ばしてみる。でも罪悪感だなぁ。蓮も悪酔いしちゃったんだ。目の前にあるチーズ盛り合わせをかじる。程良い塩気とクリーミーさが口に広がった。

「本当だよ。お礼は体で払って貰おうかと思って、服脱がせて全裸にしてベッドに押し倒してやった」

 タケさんはニヤリと笑って、舌を出した。は……マジすか。え? え?

「……え?」

 グラスを拭きながらあたしを見たタケさんは、ぷっと吹き出す。
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