隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~のレビュー一覧
幼い頃に、男の子のせいで怪我をした。右目が、見えなくなった女の子。 男と女になった。いまでも二人は、一緒にいる。罪悪感を、背負う。利用する。二人の間にあるものは。二人の、行き先は。 二度読みの作品です。一度浸かってしまったら、もう。背中がぞわり、心臓がどくり、切なくて悲しくて、でも愛おしい。黒い部分と、それに悩む「人間」を書き出すのが上手いこの作家さんだからこそ書ける。 人って、きれいなものだけで繋がっていられないね。依存、過去、いろんなもので引っ張り合う。相手が見えなくなる。自分の気持ちすら、塗り潰してわからなくなる。 でも。これが愛なんだって。知った瞬間、すべてが洗い流れていく気がしました。二人は、互いの枷なんかじゃない。翼を持ってる。二人で飛べるし、温めあえる。 自然に涙が出てしまった場面が、2つあります。どこに心を掴まれるか、ぜひ読んで、見つけてほしいです。
失いたくない、その一心で しがみついて、縛り付けて いつからこの想いが、まるで錘みたいになってしまったのだろう ただ、ただ、好きなだけなのに。 恋を恋として受け入れることが 受け入れてもらうことが ただ恋をするということが、むずかしくて。 まるで水中でもがいているみたいに苦しい 傍に居るのにいつもどこか寂しい。 文章から広がる世界観が、とにかく繊細で鮮やかで、ひきこまれました。 優しいのに痛々しくて、揺ぎないのに不安定で。 祈るように、読み続けたふたりの物語。 胸がぎゅっと捕まれる、美しい作品だと思いました。 それはまるで、水槽の中の金魚になって、ふたりの行く末を見守っているような。 この世界勘が、ふたりの赤が、今でも焼き付いて離れません。 ぜひ、ご一読
彼の足枷となった自分と 自分の奴隷になった彼。 空虚な気持ち。 痛みを帯びる傷をえぐって、 優しくキスを落として。 涙を流して。 彼に、彼の心に、触れるたび ぽっかりと開いた心が、 見えない右目が疼いた。 傷つけて、傷ついて 得たものは何だったのだろうか。 ――独特の雰囲気に嵌まってしまいました。 色んな意味で透明で、ゆらゆらと揺れる二人。 本当に素敵な作品でした。ありがとうございました。 是非ご一読を。
小さい頃のケガにより片目が極端に視力が悪くなり、光くらいしか感じない主人公 そんな主人公にケガを負わせた責任からか、つねに傍にいる男の子 ゆらゆらと流れに身を任して泳ぐ金魚のように、「人と違う自分」を感じながら過ごしてきた。 まるでそれは、水槽に入れられた孤独な金魚 片目しか見えない だから塞がないで だけど見えるはず 気付けなかったのは 目を閉じていたから 気付かないように 目を開かなかったから 独特な語り口調がとても魅力的で一気に読めてしまいました。 ひねくれて、自虐的。 だけどそれで守っていたものは…? 自分を守る術はなによりも、自分を傷つけているのかも知れない そんな風に感じました。 素敵な作品を是非、読んで見て下さい。
主人公の、弱さゆえの『ずるさ』を赤裸々に描いた一人称だからこそ、共感でき、強く惹きつけられました。 そこには綺麗ごと抜きの真実があり、でもそれはとても純粋で清らかで… そしてありがたいことに、しんみりとしたストーリーの中にも、クスリとさせる場面が多々あり、エンタメ性も抜群です。 素敵過ぎる結末には、爽快感だけでなく、満足感にも満たされます。 『美しい』という比喩がピッタリな芸術作品。
一緒にいてもつらいだけ、くるしいだけ、そんな関係性になってしまった恋人たちにこそ読んでもらいたい“愛の気づき”の物語。お互いのまっすぐな心の声を、届ける勇気をもらえます。