TITOSE
「千歳」

美代が、千歳に歩み寄る。

そして、千歳に言った。

「あの子が好きか?」

いきなり聞かれ、千歳は顔を赤くした。

「あ、う…はい」

そう言うと、美代は笑った。

「あの子も同じだ。お前がそうなら、許嫁にはしっかり言っておこう」

そう言って、美代は部屋を出た。

許嫁とは、赤い櫛をくれた平吉のことだ。

「百合子…か」

そして、千歳はまた横になった。

木の天井を見上げながら。
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