TITOSE
「百合子?」

優しく見つめてくる千歳。

百合子は心臓が爆発しそうになりながら、小さく頷いた。

「よかった…」

それから二人は家に向かった。

だが、家に向かうにつれて人が増えてくる。

「百合子ちゃん!家が焼けてるよ!」

一人のおばさんが、慌てて伝えてくる。

その瞬間、千歳は走り出した。

「ちょ、千歳!?」

家は、炎に包まれている。

千歳は、水をかけている人たちの中から一つ桶を奪い、自分にかけた。

「ちょっと千歳!何する気!?」

百合子の声も聞かず、千歳が炎の中に飛び込む。

「きゃあ!千歳っ」

百合子は、膝から崩れ落ちた。

周りの人たちも、呆然とする。
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