TITOSE
「そんな…そんな理由で美代さんを殺そうとしたのか!また、俺から大切な人を奪われるなんて…そんなの…」

千歳が、しゃがみ込んだ。

「もう、やめてくれ…。大切な人を、殺さないでくれ…」

深い深い悲しみを秘めた瞳に、平吉は何も言えなかった。

ただ、謝ることしかできなかった。

「すみません」

鬼のような剣幕の後の、悲しい瞳。

誰も、何も言えなかった。

それから美代は、息を引き取った。

千歳はかなり自分を責めていたが、百合子が慰めて、それから一年ーー…。
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