TITOSE
「俺は、追われているんだ。ここにいては、島民が危険だ。行かなければ」

千歳は、真剣な顔で夏を見る。

すると、奥から美代が出てきた。

「そないなこと、気にせんでえぇ。まさかアンタが、こんな小さい島におるとは思わんやろ。それに、アンタがそんな体で逃げれば、捕まるで」

美代が、そう言ってお腹の中の赤ん坊に話しかけた。

「せやろ?」

すると、ドンドンと美代の腹を赤ん坊が蹴った。

「ほら、お母さんもこう言っとるんやさかい、な?」

夏が、千歳を見つめて微笑む。

「分かった」

千歳はそう言うと、夏の頭をポンッ撫でた。
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