バケバケ
「俺はちょっと特殊なのかもな。」
「特殊?」
「明仁さんは人間でありながら強大な力を持ってた。それこそ、バケバケが見える洋子の素質をなかったことにするくらいの。」
「なかったことに?」
「自分が生きている間、洋子がバケバケを見るのを防いだ。」
「何のために?」
「明仁さんはその力のせいでバケバケに狙われてたからな。だから…」
「洋子を危険にさらさないために…か。」
「そう。それで…俺はそんな明仁さんの心から生まれたんだ。」
洋子を守りたいっていう心か…
なるほどね。
シイは洋子を守るために生まれてきたのか。
「男だなぁ、お前。」
「?」
俺はシイの肩を叩いた。
「戻ろう、シイ。洋子が待ってるし。」
「うん…。」
部屋から出るとき、少しエレジーの顔を見た。
こいつは俺の心から生まれて、どんな気持ちで生きてるんだろ。
俺は寝室の扉を閉め、シイと二人地下室へ戻った。