バケバケ




シイの後ろ姿を見送り、校舎の入り口に向き直る。


「ふぅ…」


よし、行こう。






廊下は静かだった。


放課の騒がしさはなく、閉じられた引き戸の向こうから先生の声が聞こえる。


加藤先生の声だ。


数学の授業中かな。


少し安心した。


緊張するな…


私は教室の後ろ側にある方の引き戸を開けた。




―ガラッ―




クラスのみんなが一斉にこっちを見た。


どうしよう…


私は動けなくなってしまった。


「洋子さん、お腹の調子は大丈夫ですか?」


加藤先生が黒板に数式を書く手をとめ、私に言った。


お腹の調子…?


「さぁ、早く席について。体調が悪くなったらいつでも言ってね。」


「はい…」


私はとりあえず席についた。


なんだか拍子抜けだ。


「洋子、大丈夫?」


隣の席の莉子が私に小声で話しかける。


「なにが?」


「なにがって…洋子授業中に突然お腹痛いって教室でてったじゃないの。」


「へっ…?」


なにそれ?




< 120 / 469 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop