バケバケ
シイの後ろ姿を見送り、校舎の入り口に向き直る。
「ふぅ…」
よし、行こう。
廊下は静かだった。
放課の騒がしさはなく、閉じられた引き戸の向こうから先生の声が聞こえる。
加藤先生の声だ。
数学の授業中かな。
少し安心した。
緊張するな…
私は教室の後ろ側にある方の引き戸を開けた。
―ガラッ―
クラスのみんなが一斉にこっちを見た。
どうしよう…
私は動けなくなってしまった。
「洋子さん、お腹の調子は大丈夫ですか?」
加藤先生が黒板に数式を書く手をとめ、私に言った。
お腹の調子…?
「さぁ、早く席について。体調が悪くなったらいつでも言ってね。」
「はい…」
私はとりあえず席についた。
なんだか拍子抜けだ。
「洋子、大丈夫?」
隣の席の莉子が私に小声で話しかける。
「なにが?」
「なにがって…洋子授業中に突然お腹痛いって教室でてったじゃないの。」
「へっ…?」
なにそれ?