バケバケ
―奈古美第二工場―
何の工場かは不明。
ただずっと使われることもなく、作業を投げ出したそのままの状態だと聞いた。
そこは愛空幼稚園のすぐそばにあった。
柵を乗り越え、敷地内に入る。
砂山や用途の分からない鉄の塊に囲まれ、灰色の建物があった。
扉は開いていた。
中に入ると、鉄の匂いがした。
「待ってましたよ、シイくん。」
工場の奥。
そこにあるドラム缶の上にシグは座っていた。
「久しぶりですね。」
「そうだな。5年ぶりくらいか?」
「はい。少し背が伸びましたね。」
「お前らと別れてから成長期迎えたんだよ。」
「成長期…ですか。」
シグは手で口元を隠しながらクスクスと笑った。
「こっちの方は何の成長もしてないようで。」
シグが自分の足元に視線を落とした。
薄暗くて気が付かなかったが、そこには何かがあった。
わずかな光を受け、その何かは金色に光った。
「……あ…」
俺は思わず息を飲んだ。
「なんで…なんでここに…」