バケバケ




シグは黙って聞いていた。


「わかりました。」


そして小さく頷いて、俺の顔を見てまた笑った。


「交渉決裂ですね。そんなことだと思ってました。じゃあ、こうしましょう。

僕が君に勝ったら…僕の言うこときいてもらいますよ。」


俺から見て右の方向を、手に持っていたカサで指し示すシグ。


「僕は不公平は嫌いなんです。そこにいる子供を早く自分の体に戻してください。それを開戦の合図にしましょう。」


カサの指す先に、手足を縛られ、口をガムテープでふさがれた小さな俺がいた。


俺はゆっくりそこまで歩みより、分身を自分の中に戻した。


次の瞬間―




―ヒュッ




「!」


風を切る音がして、シグのカサが俺めがけて振り下ろされた。


俺はそれをかわし、カサはコンクリートの床を砕いた。


床の破片が、パラパラと俺に掛かったのを感じる。


おそらく、今のは何の能力も使っていない。


なんて力だ…




< 202 / 469 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop