バケバケ
シグは黙って聞いていた。
「わかりました。」
そして小さく頷いて、俺の顔を見てまた笑った。
「交渉決裂ですね。そんなことだと思ってました。じゃあ、こうしましょう。
僕が君に勝ったら…僕の言うこときいてもらいますよ。」
俺から見て右の方向を、手に持っていたカサで指し示すシグ。
「僕は不公平は嫌いなんです。そこにいる子供を早く自分の体に戻してください。それを開戦の合図にしましょう。」
カサの指す先に、手足を縛られ、口をガムテープでふさがれた小さな俺がいた。
俺はゆっくりそこまで歩みより、分身を自分の中に戻した。
次の瞬間―
―ヒュッ
「!」
風を切る音がして、シグのカサが俺めがけて振り下ろされた。
俺はそれをかわし、カサはコンクリートの床を砕いた。
床の破片が、パラパラと俺に掛かったのを感じる。
おそらく、今のは何の能力も使っていない。
なんて力だ…