バケバケ
「バケバコだ…トキが本格的に動き始めたんだ。」
男が箱のふたをあける。
黒い渦が女の子を包んで女の子が吸い込まれる。
そして女の子がいた場所にはもう何も残らない。
流れ作業のようにそれはすぐに終わった。
映像に音がないのが余計に怖かった。
−この通り少女は突然に消えてしまいました。
少女に何が起こったのでしょうか。
防犯カメラにはまだ男の姿がある。
男は箱のふたを丁寧に閉じ、カメラの視界から消えていった。
やっぱり…見えてないんだ。
「洋子。すぐに準備しろ。」
「えっ?」
シイはテレビに視線を向けたまま立ち上がった。
「奈古美市に行くぞ。」