バケバケ
…名字で呼ばれてるのか。
4階につき、エレベーターを降りる。
「こっちですよ。」
竹内さんは私たちをミナミさんの部屋の前まで案内した。
そしてドアの前で立ち止まって動かなくなった。
「何してるんですか?」
「…いや、まだ心の準備が…」
「早くピンポン押せよ。」
灰音が急かす。
「待ってください。もし…もしあの男が部屋にいたら…」
―ガチャ
「あ」
ミナミさんの部屋のドアが開いた。
「どちらさんですか?」
しかしドアから顔を覗かせたのは女の人ではなかった。
「あっ…この男、この前の…」
ミナミさんの部屋から出てきたのは坊主頭の男の人だった。
「やっぱりミナミちゃんは…」
竹内さんは体を震わせながらうつむいた。
男の人はそんな竹内さんを不思議そうに見ている。
「あのー、ミナミになんか用っすか?」
「ミナミって…」
竹内さんが絶望的な声を出す。
なんだかすごく気の毒。