バケバケ
たしかにおかしいといえばおかしい。
「なーんか嫌な予感がするんだよなぁ。」
「嫌な予感って?」
「わかんねーけど……ま、考えても仕方ない。んじゃ帰るわ!」
灰音は片手をひらひらさせて、エレジーに続いて扉の中に入っていった。
扉は閉まり、やがて消えた。
俺は洋子を背負って家に入った。
「…ただいま。」
「お帰りなさい。」
リビングから洋子の母親の声がした。
さて…洋子の状態を何と説明するか…
玄関で思案していると、リビングの引き戸が開き、母親が顔を出した。
「あら?洋子ったらどうしたの?」
…何てタイミングが悪いんだ。
まだ何て言うか考え中なのに。
「えっとー…」
「もう、この子ったら…シイくんに迷惑かけて!」
母親がずかずかと歩みより、洋子の靴を脱がせた。
「服も靴もこんなに汚して。」
「あの…」
「シイくん、悪いけど2階の洋子の部屋まで背負っていってあげてくれる?」