バケバケ
「そうか…さっきの人は何者なんだい?」
「…あれは人ではない、バケバケというものだ。」
「バケバケ?」
「人間の心の力を受け取ったものが擬人化し、その力を原動力に動いているだけだ。」
「じゃあ、俺の心に?」
「そうだな。おそらくお前の力は生まれつきかなり強いのだろう。…これから苦労するぞ。」
「……。」
昭仁は時計をじっと見つめていた。
この時昭仁が何を思ったのかボクにはわからない。
ただ、少し悲しそうだったのだ。
「気を病むな昭仁。今は房枝の件が大事だろう。さぁ、もう行け。」
「うん。」
昭仁は鞄に時計をしまい、ボクに背を向けて鳥居の方へ歩き出した。
鳥居の前で昭仁は振り返り、ボクに手を振った。
ボクは手を振り返した。
人間に手を振るなど初めてだ。
そしてあれから50年。
ボクは完全に忘れていた。
50年前のボクは力が弱かったのだ。
今でも弱いのだが…
当然、全盛期ほど封印術の力は強くない。