バケバケ
「散歩?…いいけどおじいちゃんの仏壇行ってからね。」
「うん。」
なんかシイの様子がおかしい。
まるで早くこの家から離れたいみたいな。
おじいちゃんの仏壇に手を合わせた後、私とシイは玄関の方に向かった。
すると、おばあちゃんが後ろから声をかけた。
「どこ行くの、洋子。」
「ちょっと散歩に。」
「散歩か…止めといた方がいいよ。」
「なんで?」
「最近この辺りは物騒なのよ、なんでも神隠しがあるとか。」
「神隠し?」
あの人が急に消えちゃうっていう?
この現代にそんなことあるんだろうか。
いや…私には心当たりがある。
「そうだよ、だからあんまり外に出ない方が…」
「大丈夫。すぐ戻るから。」
「そう?じゃああんまり遅くなっちゃダメだよ?」
「うん、行ってきます。」
外に出て、後ろ手で玄関の戸を閉める。
「シイ…神隠しって…」
「間違いなくバケバケの仕業だろうな。」