バケバケ
ブランコの隣にある砂場も、昔より少し砂が減った気がするがほとんど変わっていない。
「洋子…よくこの砂場で遊んでたよな。」
「うん!…あれ?…なんでシイが知ってるの?」
「え…っと、昭仁さんから聞いたんだよ。」
「ふーん。」
この公園は、柵に囲まれてはいないので、周りの景色がよく見える。
景色といってもほとんどが田んぼか畑だけど。
ベンチに座って、ぼーっと景色を見ていると、何か黒い影が田んぼの向こう側に見えた。
「シイ、何だろアレ。」
私が指差すと、シイもその方向を見た。
「…カカシだろ。」
「カカシ?…でも……」
黒い影はだんだん大きくなっている気がする。
「ねぇ…アレ、こっち近づいて来てない?」
「……そうだな。」
影は近づくにつれて、その輪郭がはっきりしてきた。
「人…?」
すると、一緒に影を見ていたシイが突然声を上げた。
「うわ!」
「え、なに?」
「ヤバい、洋子…逃げるぞ。」
シイは影と反対方向に走り出した。
「あっ、ちょっと待ってよ!」