バケバケ
「…洋子?どうした?」
「あのね、布団もう一式敷いて欲しいんだけど…」
「……」
おばあちゃんはテーブルにカップを置いた。
そして驚いたように私を見た。
やっぱ変だよね…
「やっぱり孫だね。」
「…へ?」
おばあちゃんは遠い目をしていた。
「おばあちゃんがね、おじいちゃんと結婚したばかりのころ、同じことを言われたんだよ。」
「布団もう1つって?」
「もう1つどころじゃないよ。部屋のいたるところに敷くんだよ。二人暮らしなのにさ。」
…そうか。
昔はここにおじいちゃんのたくさんのバケバケが住んでたんだ。
シイや、ギンも含んで。
「最初は恐かったよ。この家に私に見えない幽霊がたくさんいるんじゃないかってね。」
「…あはは。」
あながち間違いではない。
「でもさ、さすがに慣れたよ。おじいちゃんは優しい人だったからね、もしかしたら本当に幽霊に布団敷いてやってたのかもしれない。」
おばあちゃんはそう言って笑った。