バケバケ
お願い…壊れて!
私は強く祈った。
あの時と同じように。
しかし、結果は違った。
何も起きない。
それどころか、体から力が抜けていく気がする。
きっとバケバコに力を取られているんだ。
「ギン!」
私は宙に向かって叫んだ。
「ギン、私の声が聞こえてるならここから出して!!」
でも、私の声は空しく反響するだけ。
「ギン!!…出し…て…」
声が枯れる。
声を出すための力さえももう無くなっていた。
視界が霞む。
シイ…
助けて…
―シイはお前を助けになんか来ない。―
「え…?」
今、声がした。
どこから?
―わかってるだろう?逆にシイにお前を助ける義務はあるのか?―
声はテーブルの上のあの黒い懐中時計から聞こえている。
―ないだろう?シイにとってお前は取るに足りない存在なのだから。―