バケバケ



嫌だ…聞きたくない。


―シイがお前を持ち主にしたのも、お前を認めたからじゃないぞ。―


嫌だ…


―お前のその無駄に大きな力を利用しただけだ。―


「止めて!!」






私の声がこだまする。


「止めない。」


「!!」


声がすぐそばで聞こえた。


顔をあげると、目の前に黒いワンピースに身を包んだ女の人が立っていた。


「……トキ…」


「ほぅ、私を覚えていたか。」


トキは私の頬に自分の手を添えた。


「お前は私によく似ているな、洋子。」


「!…やだ、触らないで!」


「この箱の中にいながらまだ声が出せるとは…やはり昭仁の孫だ。」


「……。」


逃げたいのに…


この手を振り払いたいのに…


鎖が私の邪魔をする。


「洋子、お前がシイに対して抱いている感情は決して報われない。」


「!」


「シイの契約の話…聞きたいか?」


…契約


あの黒い炎の…?




< 382 / 469 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop