バケバケ




「そんな…」


「いい顔だ、洋子。わかっただろう?そんな命を投げ出してまでシイはお前を助けに来るのか?」


「……」


「逆にお前はそれでもシイに助けを求めるのか?」


「…。」


私は首を静かに横に振った。


私のせいでシイが死ぬなら…助けになんか来なくていい。


今までたくさん助けてもらったんだから。


「…だからお前は私に似ている。好きだったんだろう?シイのことが。」


好き?


私がシイを?


違う…シイは私にとって友達で…


「私も愛していたのだ。昭仁のことを…」


違うよ…


私は……


「でも、報われなかった。報われないまま…昭仁は死んでしまった。」


「違う…シイは私の…」






胸が締め付けられる。


苦しい…


息が出来ない…


バケバコの中にいるから?





違う、そうじゃない。


もっと奥。


もっと深いところ。


涙が一つ、二つ。


零れて頬を伝い、トキの指に流れた。






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