バケバケ
―シイ、助けて―
え…?
「ん、どうした?シイ。」
「今、声が…」
灰音が耳を澄ます。
「声ー?聞こえないぞ。」
いや、俺には確かに聞こえたんだ。
呼んでる。
洋子が助けを求めてる…
「あっちだ!」
「あ…おい、シイ!!」
俺は声のする方に走り出した。
この先に洋子がいる。
助けるんだ…!
竹の間を駆け抜ける。
歩きにくい。
足が痛い。
どこかで折れた竹に引っ掻けたのかもしれない。
もっと奥だ…
もうすぐ…
そうだ、この辺り…
「!」
そして俺が見たのは信じられない光景だった。
いや、信じたくない光景だった。
「ギン…?」
ギンが、黒い箱を誰かに渡しているところだった。
その相手は腰まである黒髪に、黒いワンピース…
「トキ……?」