バケバケ
使う。
手の甲から黒い炎が体に広がっていく。
きつい…
蝕まれていくようだ。
俺を繋いでいた鎖が全て切れた。
「!」
トキが振り返る。
「貴様、契約の力を…」
洋子も俺を見ていた。
体が震えていた。
きっと怖いんだ。
ごめん、すぐに助けるから。
「シイ…止めて!」
洋子が叫ぶ。
「使わないで!おねがい…もう帰って!」
「洋子…。大丈夫だ、すぐに…」
「やだ!!…シイなんか大嫌い!早くここから出ていって!」
洋子の声が部屋中に響きわたる。
部屋の壁がボロボロと崩れていく。
洋子の心に反応してバケバコが壊れだしたんだ。
大嫌い…か。
嫌われちゃったな。
だけど…
黒い炎は体の半分を覆っていた。
これ以上力を使うのは初めてだ。
「嫌…シイ!止めて!」
洋子が泣き出す。