バケバケ
燕が頷く。
「そうか…」
ボクは中森の額に手を当てた。
「ボクの弱い力じゃ治せるかわからんが…」
中森の震えが止まり、地面に倒れた。
「……千秋!」
「安心しろ。眠っているだけだ。……さて、次は…」
ボクは灰音に近寄った。
そして彼の傷口に手を当てた。
「人間が無茶をするからだ。」
「ありがとうございます。」
女が言った。
たしか、灰音のパートナーで…名はエレジーとか言ったか。
「応急措置をしただけだ。目を覚ますとは限らん。」
それにしても…
シイが見当たらないな。
それに持ち主である洋子も…
「燕、シイはどうした。」
燕は足元に落ちていた黒い箱を指差した。
「……シイは…この中に…」
「バケバコか。」
ボクは箱を拾い上げ、開けようとした。
しかし、蓋は固く閉ざされ、まったく開かない。