バケバケ
矢印を放った直後のトキの懐はがら空きだ。
これなら…
「!」
しかし、トキを目の前にしてシイは動きを止めた。
洋子がトキの前に飛び出したのだ。
「どけ、洋子!」
「やだ!!」
本当にどうなっているんだ。
多分トキに何か吹き込まれたのだろうが。
洋子を盾に使われたんじゃあシイに勝ち目がない。
どうする…
「……俺が…」
ボクの隣で中森を看ていた燕が立ち上がった。
「止めておけ。お前じゃ無理だ。」
燕とは古い付き合いだ。
燕が強いことは十分に知っている。
だがボクはそれ以上に分かっていた。
この二人は燕が介入したところで無意味であると。
ましてボクのような力の弱い神などなおさら。
昭仁が最初に生み出した、異常な力を誇るトキ。
同じく昭仁の生み出したバケバケであり、未知の力を秘めた黒い炎を体に宿したシイ。