バケバケ




「そんな…」


シイの体がどんどん消えていく。


「嫌だよ…こんな…」


「仕方ないのだ。これが運命なのだから。」


炎がいっそう強く燃える。


シイの姿を消していく。


「シイ!」


シイは完全に消えた。


黒い炎はまだ燃え続けている。


「洋子…あれを見ろ。あれがシイの本来の姿だ。」






さっきまでシイがいた炎の中で、小さな何かが燃えていた。


「あ……」


私はその小さな何かに見覚えがあった。


「人形を保てなくなり元のモノの姿に戻ったのだろう。」







小さくなった鉛筆だった。


名前が書いてある。


「さかもとようこ」


小さい頃、短くなるまで使った、あの桃色の鉛筆。


使えなくなって捨てなきゃいけなくなった時、おじいちゃんが鉛筆キャップをくれた。


この鉛筆でおじいちゃんは私にモノの大切さを教えてくれた。


ずっと使ってた…お気に入りの鉛筆。






「……シイだったんだ。」







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