バケバケ
私たちは黒い塊の外へ出ようとした。
その時だった。
「その必要はないわ。」
「……え?」
声がした。
声は外の世界から聞こえる。
「今から探したって見つかるわけないでしょ?レアなんだから、そういう人間。」
「…誰?」
声は淡々と続けた。
「第一アテはあるの?どうせないんでしょう?」
この声…
どこかで聞いたことある。
誰だっけ。
真っ黒な壁から、手が出てきた。
次に足…
「夜中にこそこそと…朝起きて洋子が居なかったらおばあちゃんびっくりするわよ?」
頭が出てきた。
「……お母さん!!」
外の世界から黒い塊の中に入って来たのは紛れもなく私の母親だった。
「え、この人洋子の母ちゃん!?」
灰音が母を指差す。
「うん。」
「すっげー美人!!…あの、俺…洋子の友達で神崎灰音っていいます!」
「あら、いつも洋子がお世話になってます。」
母が灰音に頭を下げる。