バケバケ
「誰からだ?」
シイが訊いた。
「お兄ちゃん。」
「…お兄ちゃん?」
「うん。今大学生で県外にいるんだけど、春にこっちに来るんだって。」
「…こっちに?」
途端にシイの顔色が変わった。
「…どうしたの?」
「……あいつが…戻って来る……そうか、次の春でちょうど約束の10年…」
シイはなにやら独り言をつぶやいている。
「ねぇ…どうしたの?」
「いや…なんでもない。」
「そう。」
ちょっと気になるけど…まぁ、いいか。
春にはお兄ちゃんも帰ってくるし、賑やかになるな。
―ピリリ…
「またメールだ。」
今度の送り主は灰音だ。
『カラオケ行こーぜ!!』
「カラオケ…」
「今度は誰からだよ。」
「灰音。カラオケ行こって。」
「カラオケ?なんだそれ。」
「知らないの!?」
シイは頷いた。
そうか、無理もないか。
今まで人間じゃなかったわけだし。