バケバケ
1.神様と災厄の足音
1.神様と災厄の足音
「ここで何をしている。」
ボクの目の前には栗色の髪の青年の背中があった。
シイが無事人間になり、ボクは彼らと別れた。
気がついていたからだ。
ボクら以外に誰かがこの竹やぶにいて、ボクらをずっと見ていたことに。
「気がついていましたか、流石は神様。」
青年は笑った。
縁なしのメガネに雨が降っている訳でもないのに傘をさしている。
「時雨…お前トキの仲間じゃなかったのか。」
「神様?…今の僕は時雨ではありません。」
時雨は傘を畳んだ。
「僕はシグ。…そして、トキの仲間でしたよ。」
「…でした、か。」
「えぇ。」
「なぜ人間のくせにバケバケのフリをしているんだ。」
「なぜって…元々僕は人間でもバケバケでもないですからね。」
「……。」
相変わらず気味の悪い奴だ。
表情が読めん。