バケバケ
「でも、もう短くて使えないよ?」
私がそう言うと祖父は私の頭にぽん、と手を置き
「ちょっと待ってて」と言って書斎の外へ出て行った。
しばらくすると、祖父は何かを手に持って戻って来た。
そして私の目の高さまでしゃがんで手を開いた。
「なに?」
「鉛筆キャップ。これでまた使える。」
銀色のシンプルな鉛筆キャップ。
祖父は私から鉛筆を受け取るとそれを付けた。
「長くなった!」
祖父は微笑み真剣な表情で私を見た。
「洋子、これからつらいことがいっぱいあると思う。洋子は普通の子とは少し違う。これはたぶんおじいちゃんのせいだ、ごめんな。
でも、洋子は気にしなくていい。
この先、他の人が見えないものが見えるようになったとしても、それはいけないことじゃない。
洋子が心優しい証拠なんだ。」
「うん!」
そこで私の記憶は
ぷつりと途絶えた。
あの時は何も考えずうなずいたけど、よく考えれば変な言葉だった。
今となってはもう、その言葉の意味を聞くことはできない。