小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
第一章
再会…?
「ねぇ、アイチ」
「ん?」
英文が書かれた黄色いTシャツに、腰で穿いたジーパン。
毛先がランダムに跳ねるチョコレート色のショートヘアーがよく似合うアイチは、あたしの呼びかけに短いけれど、確かな返事をしてくれた。
ただそれだけのことだ。
ただそれだけのことだったけれど、あたしは涙を堪えるのに必死になった。
アパートの下、自転車が数台だけ並ぶ駐輪場。
一年ぶりに会えた。
やっと会うことができた。
もう二度と会えないかもしれないと覚悟した。
けれど、今、彼女は確かにあたしの目の前にいる。
そのことがものすごく嬉しかったから、その他のことなんてどうでもいいと思いそうになった。
けれど、あたしにはどうしても聞かなければならないことがある。
彼女の毛先が風に細かく揺れるのを見ながら、何とかそれに迫ろうと考えた。
相手は手強い。
ここで焦ってはまた真実をごまかされてしまう。
慎重になるあたしとは反対に、アイチはいつもと全然変わらない笑顔だった。
そこにはあたしを真実から遠ざけられると言う余裕すら見える。