小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
地元の道で
夜の商店街は静かで寂しい場所だった。
そのことにあたしはアイチがいなくなるまで気付かなかった。
並んだ店は揃ってシャッターを降ろし、街灯は頼りなく道の一部分しか照らさない。
昼間も活気のある商店街ではないけれど、夜はまるでゴーストタウンだ。
それに気付いてからと言うもの、あたしは毎日ヘッドフォンを付けて、ここを通ることにしていた。
電車の中なら痛い視線が突き刺さるほどの音量にして、自転車のハンドルを握る。
本当は別の道からでも行けるんだけれど、ここがこれから向かうオムライス専門店への一番の近道だから仕方ない。
高校1年生の時、近所のお兄ちゃんがオムライス専門店をオープンさせた。
地下にあるその店は隠れ家的でおしゃれだったけれど、お年寄りの多いこの商店街、客足が悪かった。
そこであたしたち幼なじみ6人は、学校が終わると、呼び込み班とサクラ班に分かれて、何とか客足を増やすことを手伝った。
そのうちサクラや呼び込みをしなくてもお客さんが入るようになると、幼なじみのうちの1人がバイトに入ったこともあって、閉店時間の午後11時過ぎに自然とみんなが集まってくるようになった。