小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


あたしも慌ててドアに飛び付くと、必死で怪文書をはがして行く。


2人だと、すべてをはがし終わるのが早かった。


ほんの数分ですべてが丸まったただの紙くずになる。



もうどこにも貼られていないことを確認していると、横目にアイチが地面に吸い寄せられるように崩れたのが見えた。


びっくりしてそっちを見ると、彼女は額を地面に付けて、深く、土下座していた。


「ごめん!」


「ちょっと何やってんの!?アイチは何にも悪くないって。あたしはこんなのどうってことないから!どうってこと…」


慌てて彼女を抱き起こしにかかったところで、言葉と動きが思わず止まる。


アイチは地面に顔を伏せて泣いていた。


暖かい色の照明がアイチの背中を包んでいた。


誰も通ることのない深夜のエントランスには、押し殺したアイチの泣き声と嗚咽だけが響いている。


アイチの背中に手を添えると、涙はボロボロと頬を伝った。


何で。


何で。


何で。


涙が止まらない。


何でこんなことになるのかわからない。


誰か。


そう思った瞬間、その誰かはどこにもいないことを突き付けられた。








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