小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「お疲れーっ!」


合い鍵でリビングに入ってきたアイチは、昨日の出来事が嘘だったかのように元気だった。


けれど、午後8時なんて言う時間帯に「行っていい?」なんて連絡してくる辺り、何か話があるんだろうなぁとは覚悟していた。



アイチは、キッチンで鍋の中のカレーをかき回していたあたしの横に来ると、中身を覗いて、「うわー、おいしそ~」なんて子どもみたいに嬉しそうな顔をする。


「これからご飯だから食べてく?」


そう誘ってみると、彼女は一瞬、迷ったような顔をしてから、「千津ちゃん家で食べて来たから大丈夫」とソファに座った。


丁度、テレビでは動物番組が犬特集を放送していて、彼女は案の上、すぐにそれに釘付けになる。


そんな彼女から視線を鍋に戻すと、底が焦げ付かないようにかき回しながら、温まるのを待った。



昨日、アイチは自分が変な意地を張ったせいで、あたしにまで被害が行っているんだと話していた。


ディンゴのお墓参りに行った日、彼女はお寺の前であの男に会ってしまった。


男は「次、ここに来たらどうなるかわかるな」と言った。


アイチは「関係ない」と反論した。



< 124 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop