小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


彼女に反論されたことがよほど、気に障ったらしい。


男はすぐにこっちに来て、アイチの部屋を荒らし、彼女を傷付け、あの怪文書を貼り付けた。


そのことをわざわざアイチに報告する辺り、あの男の悪意をものすごく感じる。


やり方がずるい。


アイチが自分を責める理由なんてどこにもない。


悪いのはすべてあの男だ。



お皿にご飯を盛って、カレーをかける。


それをソファの前にあるローテーブルまで運ぶと、もう1度、キッチンに戻って、今度は冷蔵庫の中から麦茶を出す。


灰皿と2人分のグラスを一緒に持って、ソファに向かった。


ローテーブルにまずはドリンクセットを、続いて灰皿をアイチの前に置く。


「おー、ありがと」


彼女はあたしを見てそう言うと、また画面に視線を戻して、ポケットからタバコとライターを取り出した。


用意してきた2つのグラスに麦茶を注ぎ終わったところで、テレビから歓声が上がった。


見ると、画面の中では柴犬の子犬がよちよち歩きで転げ回っている。


「やぁ~、かわいい~!」


ぽてぽてしたその動きに2人できゃあきゃあ言っていると、時計を見た時にはもう9時だ。



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