小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


アイチはいつもと変わらない態度と表情で煙を吐き出すと、タバコを消した。


その後で頭の中を整理するように少し黙っていてから、吹っ切れたように明るく笑う。


「もう心配しなくて大丈夫だよ。もうこの先、絶対、こう言うことは起きないから。昨日で最後」


その言葉を素直に信じて喜びたかったけれど、あの男のことを考えると、アイチがあたしを安心させるために言っているとしか思えなかった。


「嘘つき。そんなの嘘だってすぐわかる」


そう言い始めた時から、彼女の表情の変化に注目していた。


少しでも、バレたと言う顔をしたら、その後、何を言われても絶対に信じないつもりだった。


けれど、アイチはバレたと言う表情の代わりに、あたしをからかうような笑いを浮かべた。


「残念でしたぁー。あたしはそんなストレートな嘘はつきません。ホントにもう絶対大丈夫なんだって」


そこまで言うと、彼女はちょっとほっとしたような顔で微笑んだ。


「お母さんとの再婚、やっと認めてもらえたんだって。だからこれを最後にもう許してやるって」


何かが引っ掛かって本当だと思えない自分がいた。



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