小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
けれど、勝ちゃんはあたしの横をすり抜けて、曲がるはずだった角を曲がらずに先に歩き出す。
「送る」
「えっ!?」
予想もしていなかった出来事に戸惑っていると、他の3人の声が口々に背中を押した。
「おー、勝ちゃん、よろしくな」
「真海子、また明日な~」
「おやすみ~」
そう言うと、3人は笑顔で手を振り、歩いて行ってしまう。
あたしはそれを少し見送ってから、先に歩き出した勝ちゃんを小走りで追いかけて、隣に並んだ。
「ごめんね、わざわざ」
道路側を歩く勝ちゃんをチラッと見る。
「平気だよ」
彼は軽く笑って短くそう言うと、ただまっすぐ前を見て歩いていた。
深夜2時を回った道は誰もいないせいでやけに静かだった。
遠くで車の走る音は聞こえていたけれど、信号が赤になるのか、それさえたまに聞こえなくなる。
何か話さなければと思うけれど、突然2人きりにされたせいで、全然話題が出てこない。
昔はこんな沈黙、何てことなかった。
お互いに何も話すことなく歩くことなんて、きっとよくあったと思う。