小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
まだ小学生だった頃、取り壊されたあのスポーツセンターの全館を使って、あたしたちはよくドロケーをやった。
最初にじゃんけんをして、泥棒と警察に別れる。
泥棒が逃げると、警察は何秒がおいた後で追いかける。
この、一見鬼ごっこみたいなゲームのいいところは、泥棒の1人が警察に捕まっても、仲間の泥棒が助ければまた一緒に逃げられるところだと思う。
逆に警察も泥棒を捕まえようと作戦を立てたり、はさみうちをしたり、協力し合う。
数あるゲームの中でも、あたしはドロケーが1番好きだった。
「懐かしいなぁ。チームにアイチか駆がいると、有利なんだよね」
とにかく運動神経のよかったアイチと、みんなの動きを細かく読むことができた駆。
2人が一緒のチームになった時なんかは、必ずと言っていいほど、勝利の女神が微笑んだ。
「千絵里(ちえり)はよくズルしてたよな」
勝ちゃんがあきれたように笑う。
確かにチェリーはズルの女王だった。
決められた時間をちゃんと数えないで追いかけ始めたり、フロントのおじちゃんに相手チームの動きを聞いたり、女子トイレの個室にこもっていた、なんてこともあった。