小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
勝ちゃんはあたしのすぐ前に立っていた。
まっすぐ向かい合うようにして。
あたしはものすごく緊張しながら、勝ちゃんのことを見た。
もうそれだけで泣き出しそうになる自分がいる。
自分から呼び出しておいて、何も言わずにいるのはいけないと思った。
彼はあたしに呼び出されて、あたしのために時間を割いてくれている。
「あのね、勝ちゃん、あたし…」
けれど、どうしてもその先が続けられなかった。
どうしても今、ここにある恐怖に勝つことができない。
何となく、あたしの言葉を待つ勝ちゃんが苛立っているような気がした。
それならもうこの話は止めにすればよかったのに、正常な判断ができなかったのかもしれない。
「あのね、あたし、勝ちゃんのこと、好きだよ」
やっとの思いでそう告げると、もう彼の方を見ることができなかった。
心臓が変な動きをしていて、頭は真っ白、顔は熱いし、何が何だか、もうわけがわからない。
ただ、やっと思いを伝えられたことだけは本当によかったと思っていた。
「は?」
苛立った彼の声に、びっくりして顔を上げた。