小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「やぁだ、真海子、勉強してる勝ちゃんのをしごきたいの?」
「誰がそんなことっ…!」
「きゃー、真海子、照れちゃってぇー」
「降りてもらうよ?」
「やー、嘘、嘘、ごめんなさぁい」
そんなくだらないことで騒いでいた次の瞬間だった。
自転車の前に突然人影が飛び出してきた。
心臓が一度大きくドクンッと波打つ。
慌ててブレーキを握ると、キキーッと言う音がその場に響いて、前に飛び出してきた人と自転車の前輪はほんの数センチを残して止まっていた。
「ここから先は行かせない!」
その人は自転車の前で大きく両手を広げていた。
「シーやん!」
セミロングの金髪に、ハイビスカス柄の甚平。
ヤンキーチックなシーやんは鋭い目をしてこっちを見ていた。
しかし、次の瞬間には、自転車の前から飛び退いて、「なんてな」と笑う。
「ちょっと!ホントびっくりした!」
冗談じゃない。
しごきでふざけて、人を轢いてしまうかと思った。
冷や汗がドッと出るのを感じる。
「真海子なら止まってくれるって信じてたよ」
シーやんは呑気にあたしの肩を叩いて笑う。