小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
アイチは何も言わず、笑顔も浮かべず、ただ、多部ちゃんが話すその続きをタバコを吸いながら待つ。
その態度で、あたしはアイチが確実に怒っていることを確信した。
何で?
まだ何も話していないのに。
あたしまでパニックになってしまいそうになる。
多部ちゃん、とりあえず今日はやめておいた方が…
「あたし、駆先輩のことが好きなんです!」
言っちゃった…!
あまりの怖さでアイチの顔が見れない。
どうなる?
何て言う?
怒鳴る?
「おー、宣戦布告?」
聞こえてきたのは笑いを含んだ声だった。
思わず顔を上げると、アイチはおもしろそうに笑っている。
これは何を意味する笑顔?
ただ余裕なだけ?
そんなことを考えていると、アイチは煙を吐き出してから言った。
「で?話はそれだけ?」
「駆先輩に思いを伝えさせてもらってもいいですか?」
少しは緊張がほぐれたのか、多部ちゃんはスムーズに切り出した。
アイチはタバコに口をつけると煙を吐き出す。
「話はそれだけ?」
「え?…はい」
アイチはタバコの灰を落としてから言った。