小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


アイチは何も言わず、笑顔も浮かべず、ただ、多部ちゃんが話すその続きをタバコを吸いながら待つ。


その態度で、あたしはアイチが確実に怒っていることを確信した。


何で?


まだ何も話していないのに。


あたしまでパニックになってしまいそうになる。


多部ちゃん、とりあえず今日はやめておいた方が…


「あたし、駆先輩のことが好きなんです!」


言っちゃった…!


あまりの怖さでアイチの顔が見れない。


どうなる?


何て言う?


怒鳴る?


「おー、宣戦布告?」


聞こえてきたのは笑いを含んだ声だった。


思わず顔を上げると、アイチはおもしろそうに笑っている。


これは何を意味する笑顔?


ただ余裕なだけ?


そんなことを考えていると、アイチは煙を吐き出してから言った。


「で?話はそれだけ?」


「駆先輩に思いを伝えさせてもらってもいいですか?」


少しは緊張がほぐれたのか、多部ちゃんはスムーズに切り出した。


アイチはタバコに口をつけると煙を吐き出す。


「話はそれだけ?」


「え?…はい」


アイチはタバコの灰を落としてから言った。



< 166 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop