小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
絶対にブレーキを利かせるいい言葉をすぐに思い付いた。
「もうパンケーキ作らないからね!」
自転車との距離は結構できていた。
けれど、さっきのあたしのようにブレーキ音を響かせて自転車は止まった。
その後でターンしてこっちまで戻ってくると、2人はあたしの前でヘラヘラと笑う。
「なーんてな」
「へへっ」
「今、思いっきり本気で行こうとしてたじゃん!」
そう抗議したけれど、シーやんとチェリーはニコニコ笑ったまま、その事実をもみ消そうとする。
「よし!真海子!乗れ!」
シーやんはハンドルを握って、両足を地面にしっかり付けるとあたしを見る。
チェリーがスペースを空けるようにシーやんの背中にくっつく。
確かにそこには座れそうなスペースができた。
「毎朝、牛乳配達してるあたしを信じなさい」
シーやんのその言葉で、あたしは自転車の空いたスペースに乗った。
シーやんは実家の牛乳屋で働いている。
毎朝の牛乳配達で自転車の運転にはきっと自信があるはずだ。
「よし!行くぞ!」
自転車はゆっくりと動き出す。