小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
不安
今日のエッグにはいつものメンバーに加え、久しぶりに見る顔が混じっていた。
肩まである焦げ茶色のストレートの髪に、かっちりとしたパンツスーツ。
シーやんの高校の同級生だった花帆(かほ)ちゃんは卒業後、隣の駅前にあるホテルのレストランに就職した。
そのせいか、久しぶりに見る彼女は品があって、すごく大人っぽくなっていた。
高校生の頃、よくシーやんの家に泊まりに来ていた時は、髪も金髪で、服装もパンツが見えそうなくらいのミニスカートなんて格好だったのに。
あたしたちは少しの間、「久しぶりだね」なんて再会を喜んでから、自分の指定席に着いた。
花帆ちゃんは、いつものシーやんの席に座って、コーラをすすってから言う。
「指定席、変わってないんだね」
「当たり前」
アイチはそう笑ってから、後ろに振り返って言った。
「花帆ちゃん、スーツ似合わないよ」
そうからかうように言ったアイチに駆も続く。
「ほらな。おれもさっき言ったんだよ。金髪の方がいいんじゃないの?」
花帆ちゃんは「うるさい」なんて強い言葉を使っていたけれど、その顔は何だか嬉しそうに見えた。