小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
最後に花帆ちゃんに会ったのは今年の春だった。
その時はまだ金髪のままで、格好もとてもじゃないけれど、落ち着いたものとは言えなかった。
やっぱりホテルなんかに勤めると、ほんの数ヶ月でもこんなに変わるものなのかもしれない。
それとも21歳と言う年齢がそうさせるのか。
花帆ちゃんは高校を中退して、18歳の時にまた1年生からやり直した。
そこで、シーやんとは同級生だったわけだけれど、本当はあたしたちより3つ上だ。
けれど、そんな歳の差を感じないくらい、あたしたちは打ち解けていた。
「でも、ホテルなんてカッコいいよな」
駆がそう褒めた時だった。
花帆ちゃんの顔から一気に明るさが消えて、彼女はそのままうつむいた。
「ホテルなんて全然カッコよくないよ。最低でありえないところだもん。あんなところにいたら性格ねじ曲がっちゃう」
花帆ちゃんの顔からはさっきまでの楽しそうな表情が消えて、不満の色しか見えない。
「何かあったのか?」
シーやんがそう聞いたけれど、彼女は黙ったまま、じっと、テーブルの上に置いた自分の手を見つめていた。
「ごめん、変なこと言っちゃったな」
駆がそう言って、明るく笑った時だった。