小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
花帆ちゃんの頬を涙が一筋伝う。
彼女は慌ててそれを拭ったけれど、それはきっとここにいる全員の目に映ってしまっていたと思う。
「何かあったんだろ?どうしたんだよ」
シーやんがもう1度、そう聞くと、花帆ちゃんは吹っ切れたように笑った。
「やっぱりここに来ると、あたしは間違ってなかったんだって自信持てる。最高だよ、みんな」
笑ってこそいたものの、何かあったことは決定的だ。
花帆ちゃんはさらに続けた。
「あたしもこの商店街に就職すれば、こんな風にはならなかったかな」
「どうした?」
カウンター席からそう言ったアイチの声が優しかった。
「話すと楽になるよ?」
チェリーもそう続ける。
花帆ちゃんは寂しそうな顔で笑ったまま、口を開いた。
「今の自分のままじゃ、時々生きていくのに限界を感じる」
それは衝撃的な言葉だった。
花帆ちゃんはそう言って、コーラをすすると、さらに表情から明るさを消して言う。